毛糸を知って楽しく編み物をしましょう-7
毛糸の素材の種類について
毛糸の素材の種類も多々あります。ここではその種類について簡単にご紹介します。
スパンシルク
シルクはしなやかさと美しい光沢が特徴です。肌にやさしく、季節を問わず使える素材なので、手仕事の素材としてもオールシーズン使えるので、さまざまなアイテムを作って楽しめます。そんなシルク糸の中でも、手編み・手織りに使いやすい「スパンシルク」というのがあり、ふんわり感が魅力になっています。
スパンシルクとは
「紡いだ絹」で、日本では「絹紡糸(けんぼうし)」とも呼ばれています。シルクといえば、繭から引き出した、細く長い糸(生糸)をイメージされる方が多いと思います。一つの繭から繰り出される生糸は、長いもので1Km以上の長さになり、自然界では唯一の「長繊維素材」と言われています。これに対し、スパンシルクの原料は、シルク繊維を短くカットした「短繊維」。その繊維を絡み合わせ、綿状にして糸にします。つまり、ウールやコットンの糸を作るのと同じように、「紡績」の工程を経て作られるシルク糸ということになります。
スパンシルクの5つのメリット
ふんわり感のあるシルク糸ができます…スパンシルクは短い繊維を紡いだ糸なので、繊維間に空気をたっぷり含んでいます。そのため、長繊維を撚った生糸にはない“ふんわり感”をもつ糸になります。なお、シルクの光沢は、繊維を構成する「フィブロイン」というたんぱく質の特性によるものです。繊維を短くして糸にするスパンシルクは、ツヤ感もふんわりとなり、やさしい光沢になります。
手で扱いやすい太さです…スパンシルクは短繊維を紡ぐので、糸としての強度を確保するためにある程度の太さが必要となります。そのため、生糸のような極細の糸を作るのには適していません。ただし一定の太さがあることで、比較的もつれにくく、手編み・手織りを楽しむ人にも扱いやすく、作業しやすい糸となります。
自然の恵みをムダなく活用します…玉繭(2頭のカイコが1つの繭を作ったもの)・穴あき繭などは、生糸をとるのには適さず、「くず繭」などと呼ばれています。また、繭から絡んで出てきた糸など、生糸を作る際には副産物(「キビソ」といいます)も生じます。たとえ生糸にはならなくても、これらも自然が作り出す、貴重な資源です。スパンシルクはこれらの原料から作られる糸なので、自然の恵みをムダなく利用したエコな糸ともいえます。
コスト面でもメリットがあります…シルクは、お値段も高めのぜいたく素材となりますが、キビソやくず繭を糸に使用するスパンシルクは生糸と比べて原料費が安くおさえられます。そのため同じ「シルク100%」でも、お値段は抑えめとなります。
いろいろな素材をミックスできます…シルクの歴史は5000年にのぼるといわれます。その長い時間の中で、人はカイコの改良を重ねてきたため、現在はおびただしい数の品種が存在します。スパンシルクは、その繊維を短くして用いるので、さまざまなシルク同士のミックスが可能です。その上、ウールや麻など、シルク以外の素材との混紡もできます。いろいろな素材が混じり合っていると、それぞれの素材の個性が糸の表情に表れます。素材によって染まり方にも差があるため、色彩に微妙な濃淡が生じることもあります。そんなふうに多様な表情、また用途に応じて多彩な糸ができる点も、スパンシルクの特長です。
シルクの太さの単位
長繊維の生糸の場合、その太さは、数字が大きいほど太いことを表す「デニール」(単位記号=D)で表されます。一方のスパンシルクは、ウール糸に用いる「毛番」に換算して表示されることが多く、この場合は数字が大きいほど細い糸、ということになります。