棒針で作る編み物の絵柄模様
色糸を使って絵柄を編みこむ模様
複数の色糸を使って平編みに絵柄を編み込んで作る模様です。様々な国の気候風土や自然界を模倣した模様が多く、色そのものに意味がある宗教的なものもあります。
ここでは絵柄の説明をしますので、色の変え方は他ページ「編み物に絵を描く方法(3)糸を変えながら編み作る方法」を参照してください。
カウチン模様
スコットランドからカナダに住むカウチン族に伝えられた編み物の技術を基礎とした、狩猟民族であるカウチン族の伝統工芸の一つです。
比較的太い糸で丈夫に編まれており、狩猟民族らしい鹿の絵柄や鷲の絵柄をよく用いります。
とても優れた編み込みの技法で、特徴は裏に渡っている糸がぐし縫いをしたようになる為にその部分の強度と温かさが増す点です。
アーガイル模様
編み物の本場、スコットランドの伝統模様です。いわゆるギンガムチェックやタータンチェックの総称です。
アラン模様
アイルランド、アラン島で考案された模様です。アラン模様にあるなわ編みには漁師にとっては命綱、農家には収穫物を束ねる綱という意味があるもので、アラン島の人々の綱に対する敬意を示しています。
また一家の繁栄を祈る生命の木や人生に欠かせないものとして金銭を象徴するダイヤ、子供を示す玉編みといった模様も古くから存在しています。
このようにアイルランドのアラン模様は人々の願いのこもった詩情豊かな模様であるのが特徴です。
ノルディック模様
ヨーロッパ、北欧の深い雪景色を描いた模様です。雪の結晶やトナカイ、木、星の模様が多く、色合いは寒色であるのが特徴です。
シェットランド模様
9世紀〜10世紀の間にノルウェーからシェットランド諸島に伝わった編み物から生まれた模様です。その為、ノルウェーの模様と同じものも多数あります。
編み込みとしてはシェットランド諸島の中でもフェアアイルと呼ばれるフェア島で作られる編み込みは世界的にも有名です。厳密にいうとシェットランド模様とフェアアイルの模様には異なる点があり、シェットランドの模様は同一の模様を繰り返しますが、フェアアイルは同一模様を繰り返さない編み込み模様になっています。
また、ノルウェーの模様から始まったシェットランド模様は、はじめこそノルウェー模様のみでしたが、次第に現地色が豊かになり、様々な模様が作られるようになり、中でもフェア島で難破したスペイン艦隊の十字や錨と神としての太陽を意味する円形の模様、花や星といった模様がよく知られています。
編み込みと言えば、通常はこのシェットランド模様を指します。配色が豊富で愛らしいデザインのものが多い為、日本で最も人気のある模様の一つです。
ペルー・インカ模様
マチュピチュで知られるペルー・インカ帝国の伝統模様です。土の匂いのする素朴な色合いが特徴で、アルパカの糸で編まれます。絵柄は独特のもので、人間やアルパカや蝶、ヘビやトカゲ、水の神の象徴である鳥、などがみられます。
編み込み模様は前述したように現地色がはっきりと出てきます。衣服の模様としてだけでなく、中には地図になっているものもあります。
はるか昔には現在のような車や飛行機といった交通手段がなかったため、他国に行くには馬やラクダなどの動物に乗るか、歩いてゆくかしかなかったのです。そのために風化や水没に弱い紙の地図ではなく、針と糸による地図が用いられました。安全な場所には花の模様を、危険な地域には数字の6を編み込んだ地図もあります。