編み物で使われる天然素材
編み糸に限らず、糸には天然素材と化学繊維の2種類に分かれます。天然素材は植物性の綿や麻の植物から採取される繊維です。動物素材はウール、アルパカなど動物から刈り取った毛を撚り合わせて作られたものと蚕から採取されるシルクです。
しかし、使用するのがどの素材であってもその長所を生かすことができなければ、何一つ意味はありません。
良い作品を作る為にはその素材も知らなければならないのです。
現在では繊維業界の技術も高い為に糸の触り心地や風合いは触ってみないとはっきりと答えられませんが、本来持っている繊維の特性までは変化しないので、ここではそれぞれの繊維素材の特性を説明していきます。
繰り返しになりますが、製糸メーカーがどういった加工を施しているかまではわかりかねますので、素材の特性を理解した上で手触りを確認し、作りたい作品に適した糸を選んでください。
ここではまず天然素材の説明をします。
天然素材
綿
綿の花から採取される繊維。柔らかで吸水性がよく、着心地もさらっとしており着物の襦袢、ベビー服、子供服に良く用いられています。吸水性が良い為に染色もしやすいが、色落ちもしやすいです。
日本製の綿は品質の高さが評価され、天竺木綿として西洋のテーブルクロスとして多く輸出された歴史があります。
麻
かっちりとした硬さが出る為、ボビンレースやニードルポイントレースに使用された過去を持っています。均一に縒るのが難しい繊維で、糸表面にしぼが出やすく、染色もムラになりやすいです。精練が足りない場合は硬さやゴワツキが出てしまうので着衣には不向きです。水に濡れると収縮します。
しかし、繊維そのものが充分に精練されていればシャリ感のある着心地の良さが出る為、日本では昔から高級浴衣に使用されています。
精練技術がものを言う素材で、シルク、ベルベットに並ぶ高級素材です。現代では主にハンカチやポケットチーフ、高級浴衣に使われます。
日本製の麻は品質の高さで有名です。
シルク
生糸と練糸の2種類があります。
生糸とは精練を行なっていない、繭から取ったそのままの状態の糸です。非常に硬くありながら縦によく伸びます。日本では着物の帯、三味線やお琴の糸といった着衣以外でも多の需要がある糸です。昔は人間の手術用の糸として使われていました。
練糸とは精練を行なってアルカリ性に変化させた絹糸です。一般的に絹、シルクと呼ばれている絹糸です。水に弱く収縮する欠点を持っていますが、光沢があるので凹凸のある作品に適しています。通気性、保温性も良く、着心地においては絹に勝るものはありません。
動物性タンパク質のため、虫が喰いやすくカビも生えやすいので、保存するには対策が必要です。
シルクにも様々な種類がありますが、日本の絹では小石丸という蚕のものが最高の地位を得ています。
ウール
羊の毛を木屑で洗い、撚り合せた糸です。動物性タンパク質なので虫が喰いやすいのが弱点です。それ以外にはこれといった欠点は無く、毛足が短い為にアレルギーを持つ人にも人によっては使える可能性があります。保温性には非常に優れ、素朴な風合いに仕上がるので男性用の衣服によく使用されます。
世界中で愛されている素材です。
アンゴラ、カシミヤ、アルパカ、モヘヤ
これら4種はウールの中に含まれていますが厳密に説明すると高級獣毛に入ります。
編み糸としては毛足が長く、優雅な印象を与える為、女性用のニットやマフラーに使用されます。布地では男性用の着衣としても使用されます。
もっとも高級な部類に入る獣毛ですが、編み糸として使用するときはアレルギーに注意する必要があります。長い毛足が花粉やハウスダストを絡め取ってしまう為にアレルギー反応を起こしてしまいます。アレルギーがない人にも注意が必要で、首元に触れると痒くなる人がいます。
編み物はファッションですから見た目は非常に重要ですが、アレルギーや痒みを起こしてしまうようでは安心して切ることができませんので、自分以外の方のセーター等を編まれる場合はそういった面も考慮に入れてください。